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    ■特別寄稿「私はどのように生きるか」

    • 2015.03.04 Wednesday
    • 16:12
    昨年の暮れ近く、会津放射能情報センターに掛かってきた電話です。「私は3年前、中通りから会津に自主避難をしてきました。小学生の息子がお腹や頭が痛いと訴えあらゆる検査をしましたが、原因がわかりません。精神的な要因ではないかと、カウンセリングを受けていますが、とても心配なのです」。原発事故前はとても活発だった子の変化を不安そうに話されました。この母親は4年近く、放射能への不安をひとり抱えていたようです。毎月のセンター健康相談会には、高齢の強制避難者が訪れます。彼女の足取りは遅く身体は硬くこわばっています。「事故前の私はよさこいを踊るくらい集落でいちばん元気だったんです」という言葉からは想像できません。4年に渡る避難生活の疲労が彼女を変えてしまったのです。
    新年と共に、県内では復興の声が響きます。常磐道や国道6号線が開通し、物流や人々の行き来が加速されます。教育による復興の象徴はふたば未来学園高校の開校でしょう。東京五輪合宿を誘致するためにJビレッジも復活。被災者の苦労は美談となります。ますます大きくなる復興の掛け声。しかし、その中でも、微かな声は聞こえてきます。会津放射能情報センターは、その声を聞くことができる場所でありたいと願っています。と、同時に、この声を聞くべき者たちは私たちだけではなく、原発事故被害を過小評価し再稼働や輸出を目論み、国民の人権を木っ端微塵に打ち砕く国家や権力者たちこそ聞くべきだと怒りを持って思うのです。
    原発事故の向こうに見えるのは、かなり厳しい現場です。日々廃炉作業に6千人以上が携わっています。健康と安全が守られることを祈るしか私にはできません。原発事故当事者の悲しみや苦しみも見えてきます。そして、生命を守るために立ち上がった人々、また事故前から闘い続けてきた人々の姿も見えてきます。
    原発事故を経験し、国民の願いや人権を蔑ろにするこの国の課題もより鮮明になってきました。末息子は、今、沖縄・辺野古にいます。美しい海が広がる大浦湾に建てられようとしている巨大な米軍基地建設反対するためカヌーに乗り非暴力闘争に加わっています。海の安全を守ることが任務であるはずの海上保安庁との衝突はますます激しくなり、小さなカヌーは転覆され、一旦溺れさせて身柄を確保、拘束します。キャンプシュワブゲート前でスクラムを組む抗議者は機動隊や警察によってごぼう抜きにされ高齢のオバアたちも倒され怪我しています。私たちは今、生き方が問われています。何を見て、どのように考え、行動するのか。他人任せの生き方から自らの生き方を選択することが『命こそ宝』の社会への第一歩だと、私は信じています。

    会津放射能情報センター代表 片岡 輝美

    ■ " あれから三年… "(3)

    • 2014.05.01 Thursday
    • 17:26
    会津放射能情報センター 片岡 輝美

     辻褄の合わないこと…。4月4日、衆議院本会議で、原子力の平和的利用を目的とした日本・トルコ、日本・アラブ首長国連邦政府間で原子力協定締結が可決されたことを知り、私は下記のメールを出しました。4月10日現在、返事はありません。
    ■衆議院議員 玄葉光一郎さま
     初めてメールいたします。私は会津若松市在住の者です。昨日、衆議院本会議でトルコ・UAEとの原子力協定が可決されました。
     玄葉議員は福島県選出の国会議員でありながら、この議案に賛成し、笑顔で起立しました。未だ14万人の県民が、故郷から離れ希望が持てない現実を生きているにも拘わらず、なぜ海外輸出が許されるのでしょうか。私は、玄葉議員の判断に大きな疑問と大きな憤りを感じずにはいられません。
     原発は人間が作ったものです。人間が作ったものは壊れるのです。3年前に、玄葉議員を含め私たちはその経験をしたばかりではありませんか。今、福島県民や子どもたちが味わっている悲しみや不安を地震国トルコやUAEでも生み出す可能性があることが、想像できませんか。
     原発事故によって、家族や地域が崩壊しています。福島県を愛し豊かな自然の中で子育てを夢見ていた若い家族が、日本政府の原発事故から学ばない愚かな「再稼働・海外輸出」の判断と福島県の子どもの生命を守ろうとしない不誠実な対応に失望し、他県へ移住しているのです。これは、日本政府と福島県自らが、未来を担う福島県民を失い、国政に希望が持てない民を生み出しているのです。
     玄葉議員、あなたが民主党の中でたとえひとりでも、福島県民として原発海外輸出は間違っていると声を挙げたなら、多くの県民はあなたに微かな希望を見出したことでしょう。しかし、昨日のあなたには私たち県民が失望し落胆しています。玄葉議員プロフィールに座右の銘は「足ることを知る」とありましたが、辻褄の合わない話です。
     今一度、ご自分がどのような状況にある地域から選出された議員であるのか、誰のために何のために議員であり続けるのかを、ご自分の胸に問うていただきたい。福島県選出国会議員として誇りと使命を取り戻すことを、そして、昨日欠席、退席した民主党議員を処分するような愚を重ねることがないことを、一県民として強く要望します。
    2014年4月5日
    片岡 輝美

    COLUMN#12「僕たちが主権者だ!〜福島を取り戻すために〜」

    • 2013.06.21 Friday
    • 09:33
     今春の僕の最大のショックは、大好きな山菜のコシアブラが県内のほぼ全域で出荷停止になったことだ。会津に来て初めてこの山菜を知り、大ファンになった。今年も検査せずにいただいた。でも放射性物質のことを気にしないで、コシアブラが食べられるのは、一体いつの日だろうか。何年も何十年もかかるかもしれない。福島の山菜は、県外から来る知人にいつも自慢していたのに、悲しい。

     福島第一原発は、無能で無責任な東電がヘマばかりを繰り返し、福島の大地や海を汚染し続けている。除染は遅れや期待はずれ、さらには暴力団の関与が報じられている。完全な賠償は遅々として進まないのに、復興予算は流用され、福島の苦しい現状は何も変わらない。僕には住民無視の「押しつけ復興」としか思えない。その一方で安倍政権は原発の再稼働、輸出へ奔走している。福島県の人口195万人は、日本の総人口のたった1.5%程度だから、そんな「少数派」の苦しみなど無視しても差し支えない、と言わんばかりだ。

     原発事故後3年目に入り、多くの福島県民が苦しみ、憤り、不安や不満を抱え、遅々として進まない復興にいらだっているにも関わらず、多くの県民が政治を変えることなど無理だと諦めているように思える。だが、江戸時代のように殿様に治められている時代ではない。日本国憲法前文にはこうある。「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。」国民が国の主権者で、県民が県の主権者なのだ。主権者に政府を選ぶ、あるいは創る権利がある。政府は主権者の声を聞く義務がある。憲法を引用したついでに言いたいことがある。改正するなら、前文の「戦争の惨禍」に続けて「原発事故の惨禍」も加えて欲しい。原発事故の惨禍は、福島第一原発の廃炉が完了し、コシアブラが安全に食べられるときまで続くのだ。だから「原発の放棄」も憲法に加えて欲しい。そして「核兵器の不保持」も。ヒロシマ、ナガサキ、フクシマを経験した国家としては当然のことだろう。

     僕たちは、主権者であって、治められる民ではない。だが、その権利は黙って与えられるものではない。「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない」(憲法12条)つまり、僕たち国民の日々の努力がなければ、権利も自由もなくなるよー、って書いてあるのだ。憲法に言われなくても、歴史を見れば当たり前のことだが。
    「不断の努力」とは何か。僕なりに考えてみた。
    ■政治の動きに毎日注意する(不断の努力そのもの 12条)
    ■政府(国や県)や議会に要望を提出する(請願権 16条)
    ■政治家に手紙を書く、電話する(表現の自由 21条)
    ■マスコミに投書する(表現の自由 21条)
    ■インターネットで発言する(表現の自由 21条)
    ■関心のあるテーマの集まりに参加してみる(集会の自由 21条)
    ■同じ考えの仲間と政党(政治団体)を作る(結社の自由 21条)
    ■自分が立候補することを検討してみる(法の下の平等 14条)
    ■政治家になって欲しい人に立候補を要請する(国民固有の権利 15条)
    ■自分の考えに近い立候補者を応援し投票する(国民固有の権利 15条)
    ■憲法を守らない公務員(現職の政治家を含む)を辞めさせる(15条 国民固有の権利 及び 99条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。)
     人任せで、福島を取り戻すことはできない。僕は、国民主権を定めている現憲法があるうちに、主権者として行動しようと思っている。皆様も憲法を読み直して小さな一歩を!

    HP  http://www.ohara21.com
    ご意見は下記まで
    iken.ml@ohara21.com・twitter : @tofuya_ohara

    ■ COLUMN#11「"ふくいち"に関する素朴な疑問」

    • 2013.05.29 Wednesday
    • 17:13
    ■ COLUMN#11「"ふくいち"に関する素朴な疑問」

     5月はじめ気になるニュースがあった。
     東京電力は9日、福島第一原発1号機の原子炉建屋を覆うカバーを撤去すると発表した。建屋上部に散乱するがれきを撤去するためで、4年後に新しい建屋カバーを完成させて燃料プール内の核燃料を取り出す予定。カバー撤去後、新しいカバーができるまでは大気中に放出される放射性物質が増えるが、東電は「影響は少ない」としている。
    (朝日新聞デジタル5月9日版)

    ■素朴な疑問1 なぜ国は東電を監督しないのか?
     放射性物質の飛散を防止するために作られた1号機のカバーを4年間もはずすのに、東電は「大気中に放出される放射性物質は増えるが、影響は少ない」のひと言で進めようとしている。カバーがなくても影響が少ないのであれば、そもそもカバーは不要なはずで、影響があるからカバーをつけたのでは?ひとつひとつの廃炉作業に関して、なぜ国は環境影響評価や安全評価をしてから、許可を出すということをしないのか?福島県もまた、そのことを国に要求すべきだ。ウソつきで無能な東電から「影響は少ない」と言われても信じることはできない。カバーをはずし、4年後に再び設置するまで、いったいどれだけの放射性物質が放出されるのか、どのような手順で作業が進められるのか、国は、福島県民にデータを示しながら丁寧に説明すべきだし、県民の納得なしに作業を進めるべきではない。

    ■素朴な疑問2 なぜ国は現場検証しないのか?
     冒頭に引用した記事によると、東電は、1号機のカバーをはずし、がれきを撤去するという。政府事故調や国会事故調などによっても、ふくいち原発事故の原因は、まだ完全には解明されていない。東電の責任を明確にするためには、東電が証拠隠滅をはかる前に、事故現場の状況を詳細に記録し、保全することが必要ではないか。交通事故でも加害者が勝手に事故現場を片づけるというのは許されない。

    ■素朴な疑問3 廃炉作業事故の避難計画がないのはなぜか?
     これまでにも、がれきを誤って使用済み核燃料プールに落としたり、ネズミ停電事故、汚染水漏れ問題など、東電のずさんな廃炉作業が明らかになっている。ひとつ間違えば大事故につながりかねないことばかりだ。ひとつひとつの廃炉作業に関して、事故(廃炉作業事故)と影響を事前に想定し、福島県民や近県住民の防災計画、避難計画、避難訓練を実施しないのはなぜか? 逆にそのような計画なしに、東電まかせで廃炉作業を進めるべきではない。
     安倍政権は、廃炉作業の監督責任を果たさないまま、原発の再稼働、原発輸出に奔走している。3.11の原発事故の影響で今も苦しむ福島県民を愚弄しているとしか思えない。

    小原直樹/豆腐屋おはら店主

    10「虹色のカレンダー」

    • 2013.05.28 Tuesday
    • 11:21
     原発に頼らない社会を作ることは、すでに福島県のコンセンサスになっていると言っていいだろう。しかし、それは原発をメガソーラーなどに置き換えるというレベルにとどまっているように思える。僕は、働き方や生活のあり方まで見直すべきだと考えていて、未来の福島県をいろいろと夢想している。
     三重県に避難していたとき、知り合った方から「菜園家族21」(コモンズ社)という本を教えてもらった。小貫雅男氏が提唱されている考え方で、このテーマに関して何冊も本を出版されている。《週休5日制による、両親・子ども・祖父母三世代「菜園家族」》構想では、人々は、週のうち2日間だけ従来型の仕事(民間企業や公的機関に勤務)をして、残りの5日間は、「菜園」での栽培や手作り加工の仕事をして生活をするか、非農業部門の自営業(家族小経営)を営む。あるいは、子育てや文化芸術活動、スポーツ、娯楽などの人間らしい創造活動にも携わる。原発事故後、なぜこんなことになったのか、僕もいろいろと考えていて、お金を稼ぐために、がむしゃらに働くことが必ずしもよいことではないと思い始めていたので、週休5日の「菜園家族」の考え方は、非常にシンプルでわかりやすかった。
     しかし、よく考えてみると、会津をはじめ福島県の農村部には、すでに「菜園家族」的な暮らし方がある。3世代で暮らす農家は多いし、農業を縮小しても、自給用の作物は栽培している家族は多い。働き方として、週休5日とはいかなくても、冬だけ除雪の仕事をしたりする人もいる。3.11以前から、若い人は農村を出て、過疎化が進んでおり、原発事故はさらに追い打ちをかけた。出て行った若い人は農家的な暮らしを「古くさい、田舎くさい」ものと感じたのかもしれない。でも、東京から会津に惚れて移住した僕からみると、田舎の暮らし方が、とてもうらやましく見えたし目指す方向と感じていた。「菜園家族」が未来の姿だとすると、失われつつある農的暮らしこそ、日本がめざすべき未来志向の暮らし方なのだ。
     昨年11月に豆腐屋を再開した際、週4日だけ店をあけることにした。一人で豆腐屋をするには、それが限界という面もあるが、実は「菜園家族」の週休5日の考え方にも影響を受けた。今のカレンダーを見ると、日曜祭日は赤、土曜は青、その他の5日は同じ色というのが多い。週休5日にするには、社会全体の制度の変更も必要だが、毎日違うことをする日と考えるために、いっそのこと週の七日のそれぞれを違う色にしてしまうのはどうだろうか?そう、虹の七色だ。赤の日は民間企業に勤務、橙(だいだい)の日は公的機関で働き、この2日で現金収入を確保する。黄の日は学校で学び、緑の日は菜園を中心に、青の日は自営業(豆腐屋、蕎麦屋?)、藍の日は手作りの加工、紫の日は子どもと遊び。例えばこんな具合だ。
     カレンダーが虹色になるだけでも、楽しくない?「菜園家族21」是非ご一読を。

    小原直樹/喜多方市/豆腐屋おはら店主

    09「東電も遅いが県も遅い ?ふくいち停電事故をめぐって?」

    • 2013.05.28 Tuesday
    • 11:20
    「東電も遅いが県も遅い 〜ふくいち停電事故をめぐって〜」

     3月18日、福島第一原発(ふくいち)で停電し、使用済み核燃料プールの冷却が停止した。たまには前向きで楽しい話題で、と本コラムの原稿をほぼ書き上げていた直後だった。背筋も凍るような深刻な事態に急遽テーマを変更。またまた怒りの原稿を書く羽目になってしまった。
     ふくいちの各号機には392〜1533体、共用プールには6377体もの使用済み核燃料が保管されており、冷却できなくなって放射性物質が放出されれば、最悪の場合、少なくとも東日本は壊滅、場合によっては日本全体が壊滅するとも言われている。最悪のシナリオについては、国や県の責任で是非シミュレーションしていただきたい。
     問題にしたいのは、福島県民への事故の通報のあり方である。停電が発生したのが3月18日午後6時57分頃。東電はその10分後には原子力規制委員会に通報、約40分後に福島県に通報し、報道機関への公表は約3時間後だったという。僕もこのことを知ったのは、午後10時をかなり過ぎたNHKニュースだった。東電が一回目の会見を開いたのは15時間経った翌日の午前10時。東電は、報道各社から、公表が遅いと集中砲火を浴びた。しかし、福島県も停電から40分後には通報を受けていたわけで、1時間後には公表することが可能だったはずだ。
     僕の住む喜多方市の農村部では、防災無線があり、大雨への警戒、熊が出たから注意、と日頃から様々な警報が役場から流されている。しかし、今回のふくいちの停電事故に関しては何も流れなかった。というか、日頃から原発関連の注意報は何も流れない。福島県は、廃炉作業中のふくいちでも事故が起こりうる(廃炉作業事故という)という立場で、被害想定を作り、警戒レベルを設定し、避難計画、放射線防護計画を準備して、警戒レベルに応じた警報を県内に流すべきである。3.11の直後、福島県から適切な警報が流されなかったために、放射線レベルの高い風下に避難して、無用な被曝をした県民が多数いる。今回の県の対応を見ていると、当時の過失をちゃんと反省し、改善策をとっているとはとても思えない。
     停電の発生した翌日の3月19日、福島県は東電担当者を呼び、冷却停止や公表の遅れを「県民に大きな不安を与えている」と厳しく指摘し、対応の改善を求めた。東電には、もちろん責任があるが、東電を責めることで、自らに責任がないかのように振る舞う福島県の行動はパフォーマンスにしか見えない。やれ、復興、復興と経済の面ばかりに力を入れ、肝心の県民をこれ以上の被曝や被害から守るという姿勢は全く見えない。
     ふくいちの廃炉が完全に終了するまで、福島県は危険地帯であり、非常事態下にあるのだ。そのことを直視しながら、対策を立ててこそ県民の不安が少し解消されるのではないだろうか。ただし、福島県だけが危険地帯なのではない。原発の立地する全国の全ての地域もまた危険地帯である。いや日本全体が危険地帯と言った方がいいかもしれない。福島県には、そのことを教える義務がある。「他の地域の方には、こんな目に遭って欲しくない。私たちで十分だ。」と。
     
    小原直樹/喜多方市/豆腐屋おはら店主

    08「福島県とは何者か?-甲状腺ガンをめぐって-」

    • 2013.05.28 Tuesday
    • 11:20
    「福島県とは何者か?-甲状腺ガンをめぐって-」

     2月13日に、福島県の甲状腺検査で新たに2人が甲状腺ガンと診断されたことが県民健康管理調査の検討委員会で報告された。これで、甲状腺がんと診断された子どもは3人、7名にがんの疑いがあることになった。検討委では、これまで子どもの甲状腺がんの発生頻度は、100万人に2人程度としていたので、3万8114人の調査で3人(または疑いを含めて10人)というのは、極めて高い確率だ。しかし、検討委後の記者会見で鈴木真一教授(福島県立医大)は、「チェルノブイリで甲状腺がんの発症が増加したのは、原発事故後4,5年経ってから。元々あったものを発見した可能性が高い。(原発事故との因果関係は)考えにくい」と語った。

     昨年10月に、県が検討委の委員らを事前に集め秘密会議を開いていたことが明らかになったのはまだ記憶に新しい。秘密会議では調査結果に対する見解をすり合わせ「がん発生と原発事故に因果関係はない」ことなどを共通認識とした上で、本会合の検討委でのやりとりを事前に打ち合わせていたのだ。県は、秘密会議の存在を認めた上で、今後は開催しないとした。だが、検討委のメンバーが代わったわけでもなく、2月13日の発表は、秘密会議での打ち合わせ通りとなっている。
     福島県とはいったい何者か、という疑問がわく。自治体として、県知事も県庁職員も県民の公僕だ。県民の委託を受け、県民の健康、安全、財産を守ることが最大の使命のはずだ。だとすれば、「原発事故と因果関係があるのではないか」、という立場から健康調査を進めるのが、あるべき態度だろう。因果関係があるかないかで、今後の損害賠償や、原発事故の責任追及に大きな違いが出てくる。事故の当事者である東電やその監督責任のある国が責任を逃れるために「因果関係はない」と主張することはあるだろうが、福島県がそういう立場をとるとは何事か。福島県は東電や国の下請けか。

     今後、さらに多くの子どもが甲状腺がんを発症すると思われる。「原発事故後4,5年」経ったら、すべての発症例に関して、「因果関係がある」と認定するのだろうか。原発事故後4年とは2015年、再来年である。広島・長崎の被爆者の方々の多くは原爆症となかなか認定されず、長年苦しまれた。だが、それは国が認定しなかったのだ。水俣病もしかり。ところが、福島では県が認定しない態度だ。

     明治時代、三島通庸が福島県令として、会津三方道路の建設を県民に強制し、自由民権運動を弾圧した。圧政に県民が抗議した喜多方事件(福島事件)では多くの逮捕者を出した。県令は今の県知事にあたるが、国からの任命制だった。知事公選制になった今も福島県がやっていることは、県令時代と本質的に変わらない。県民のために東電や国とたたかうという気概を、福島県には持っていただきたい。知事と県職員の猛省をお願いする。

    小原直樹/喜多方市/豆腐屋おはら店主

    07「 "苦情!裏切者へ!" への返信」

    • 2013.05.28 Tuesday
    • 11:19
    「 "苦情!裏切者へ!" への返信」


     1月に豆腐屋おはらがテレビで紹介され、その直後にいただいた感想メールと僕の返答をご紹介する。
    ------------------感想メール
    苦情!裏切者へ!
    原発の影響にも負けずにがんばってた人がほとんどなのに、しかも会津に住んでる人間がとんずらかましといて、落ち着いたら戻って営業再開ですか?ふざけんな!小学生だってがんばってた時にとんずらかましといて!何が福島だよ!冗談じゃねーよ!逃げた奴が落ち着いたからって戻ってくんな!浜通り、中通りなんてハンパじゃなかったんだぞ!会津地方の奴が逃げんな!ホントふざけてるよ、放射能にも負けず、こちらに留まった人、現場で仕事してる人、そして子供達!そんであんたらは逃げた奴。テレビで良くデカイツラできますね?!
    ------------------返答
    ××様
    メールありがとうございます。ご批判真摯に受け止めます。
    2011年の6月に店を閉め、佐賀に避難しました。その理由は、㈰豆腐屋のまわりで、比較的高い線量を計測したところがあり、製造工程への粉塵の飛び込みなどが心配になったこと㈪福島市などの小さいお子様をお持ちの親御さんから、避難した方がいいか相談を受けていたこと㈫そのまま豆腐屋を続けても、水や地元の大豆から放射性物質が検出される恐れがあったこと、などです。中通りや浜通りのお子さんをお持ちのご家族に避難して欲しいと思いましたが、まずは会津地方の自分が避難することが、当時の僕にできる精一杯のことでした。避難先から福島を支援する活動をしたいと思っていましたが、自分たちの生活で精一杯というのが現実で、結果的に何もできませんでした。避難生活は、覚悟はしていたものの本当に辛いものでした。出会った他の避難家族も大変なご苦労をされていました。その後、福島のために働くためには、福島に戻るしかないと思い、単身福島へ戻ってきたのです。福島が落ち着いたから戻ってきたのではなく、一向に状況がよくならないので戻ってきたのです。豆腐屋をするためだけに戻ってきたのではありません。避難した人も、とどまった人も、福島県民は皆大変な苦労を味わっています。原発事故そのもの、そして事故への対応をめぐり、国の対応は非道かつ理不尽なことが多すぎます。東電が第一の責任者ですが、国や県にも大きな責任があります。なぜ年間1mSvだった一般人の基準を事故が起きてから20mSvに上げたのか。なぜ避難したい家族を避難させないのか。残って頑張る人たちに手厚い支援をしないのか。僕はこれから、その理不尽なことに対して、立ち向かおうと思っています。そのために福島に帰ってきました。被害者同士が争っても加害者の思うつぼです。××様も是非、一緒に闘って下さい。よろしくお願いします。
    -------------------------------------
    と書いて送信したが、メールアドレスが正しくないようで戻ってきた。残念だ。

    小原直樹/喜多方市/豆腐屋おはら店主

    06「フクシマ暦3年を迎えるにあたって、十自の掟」

    • 2013.05.28 Tuesday
    • 11:18
    「フクシマ暦3年を迎えるにあたって、十自の掟」

     早くも新年を迎えることになった。僕は、3.11が人類史の変わり目だと考えているので、2011年をフクシマ元年と呼ぶことにしている。このフクシマ暦では、2013年はフクシマ3年だ。フクシマ元年を境に、人類はますます悪い方向へ進んでいくのか、それとも新しい文明を築く方向に進んでいくのか、それは後世の人にしかわからない。しかし、僕たち福島県民は新しい福島を創る努力をすることで、年々よりよい方向へ向かっていきたいものだ。まずは自分のために、十自の掟を考えた。十自とは「自」で始まる10個の言葉。会津藩の什(じゅう)の掟にならったものだ。もっとも什の掟の什とは、会津藩の藩士の師弟を教育する組織のことで、掟の数は7つ。ちなみに前号の本連載でも「ならぬことはならぬ」を引用したところ読者の方からご意見をいただいたので引用させて頂く。
     
    ----引用----
    私は会津生まれですがサムライが大嫌い、什の掟も大の苦手です。それは「ならぬことはならぬ」と言いながら自分たちの間だけで通用するようにして、「切り捨て御免」と農工商の民をその対象外にしていたからです。
    「什の掟」、※が私の注釈。
    一、年長者の言うことに背いてはなりませぬ
     ※年長者でも民百姓は武士の下だから言うことはきかなくてもよい。
    二、年長者には御辞儀をしなければなりませぬ
     ※年長者でも民百姓は武士の下だから御辞儀はしなくてもよい。
    三、虚言をいふ事はなりませぬ
     ※武士には虚言を言ってはならないが民百姓には言ってもよい。
    四、卑怯な振舞をしてはなりませぬ
     ※武士には卑怯な振る舞いをしてはいけないが、民百姓にはしてもよい。
    五、弱い者をいぢめてはなりませぬ
     ※武士の間では弱い者いじめをしてはいけないが、民百姓にはしてもよい。
    六、戸外で物を食べてはなりませぬ
     ※それは家がない民百姓と同じことだから。
    七、戸外で婦人と言葉を交えてはなりませぬ
     ※それは学がないとされていた民百姓と同じことだから。
    ならぬことはならぬものです。
     ※武士の間でしてはいけないことをしてはいけないのです。

     サムライは自分の手を汚さずに白い米の飯を食べ、農民は土に這いつくばっても白米が食べられなかった時代です。その農民こそサムライに向かって「ならぬことはならぬ」と言いたかったことでしょう。
     鶴ヶ城が落ちた時に城の周りで民百姓が両手をあげて万歳をして喜んでいたという事実はあまり知られていませんが、私たちがこの子孫であるかも知れないのです。いや、私はその子孫でありたいのです。
    -----------
     
     なるほど、そういう見方もあるのですね。
     では、僕の十自の掟を。
    一、自然(じねん) 
     自然(しぜん)の摂理に従って生きるべきこと。
    二、自尊
     自然(じねん)の伝統と知恵をもった福島人の一員たることを誇りに思うこと。
    三、自主
     誰かに盲従することなく、自分の頭で考え、行動すること。
    四、自立
     経済的に誰かに依存するのではなく、自らの力で立つこと。
    五、自治
     わがムラ、マチはわが達で治める気概と風習を守るべきこと。
    六、自助
     すぐ他人に頼るのではなく、「天は自ら助くる者を助く」と信じ、まず自分たちで道を切り開くべきこと。
    七、自営
     雇われることを当然とすることなく、自分が事業の主(あるじ)たること。
    八、自給
     何でも買えばいいという風潮をやめ、自給の文化を取り戻すこと。
    九、自由
     他人に従属するのではなく、自由たること。
    十、自戒
     日々、自らの言葉と行いを省み、戒めること

    「為せば成る、為さねば成らぬ何事も、成らぬは人の為さぬなりけり」
     最後のまとめは上杉鷹山の歌をいただいた。
     新年が皆様にとって幸多き一年となることを願って。


    小原直樹/喜多方市/豆腐屋おはら店主

    05「会津人なら、脱原発、反TPPに一票を!」

    • 2013.05.28 Tuesday
    • 11:17
    「会津人なら、脱原発、反TPPに一票を!」

     去る11月10日、1年5ヶ月ぶりに豆腐屋を再開した。休業前の多くのお客様と再開と再会を喜びあい、また新しい方にも大勢来て頂いている。「おはらさんの豆腐はおいしいね!」と言ってもらうと、豆腐屋を再開してよかった、やっぱり僕の天職は豆腐屋なんだ、という実感が湧いてくる。水を得た魚の気分だ。一生懸命に美味しい豆腐をつくる→おいしいねと言われる→嬉しくなってもって美味しい豆腐を作ろうと努力する。この日々の循環の中で、豆腐屋としての存在価値、働く喜びをかみしめる。一方で、「おはらさんが帰ってきて、豆腐屋を再開したから、会津はもう大丈夫だね。」という声もちらほらと耳にして、やや複雑な気分になる。会津が大丈夫だからという確信をもって会津に帰ってきたのではないし、豆腐屋を再開したのでもない。だからといって、会津は大丈夫ではないということでもない。放射能には注意を払わなくてはいけないということだ。僕は豆腐屋の再開にあたって、水を検査に出し、商品の代表として厚揚げも1キロ切り刻んで、放射能検査に出した。こういう注意が必要だということだ。それは、福島県に限らず関東を含む東日本全体に言えることだろう。

     それにしても、小さな豆腐屋がこれほどの注意を払わなくてはいけないということ自体が異常だし、くたびれる。何でこんな目にあわなくてはいけないのか。原発事故が起きたからだ。当たり前だが、原発がなければ事故はなかった。長期にわたって自宅に戻れない方々も沢山いる。農家は農作物が売れなかったり、安く買いたたかれている。福島県民がこれほどの辛酸をなめているのに、まだ原発を稼働させたい人々がいる。信じがたいことだ。本当に同じ日本国民なのかと疑う。日本列島で、何千年も日本人を支えてきたのは、日本の自然、海、農地、豊かな水だ。それを長期にわたって汚染する可能性のあるものは、原発に限らずこの列島にあってはならないのだ。食こそ人間の基本。だから、日本の自給率が少しでも上がればと国産大豆にこだわってきた豆腐屋は、日本の農業を脅かすTPPにも、絶対反対だ。

     奇しくも、豆腐屋が再開してから1週間もたたないうちに、衆議院が解散し、年末のあわただしい時に選挙ということになった。3.11の原発事故後の始めての国政選挙だ。脱原発か、再稼働か。TPP推進か、反対か。原発事故を経験したこの国の未来を決める、とてもとても重要な選挙だと思う。日本列島中、原発だらけにしたのはどこの政党だ? 原発事故後、ちゃんと福島を守れなかったのはどこの政党だ? こんどこそ、目先のことにとらわれずに、未来につながる政党、候補者に投票しなくては、福島の苦しみは続くし、この国は滅ぶ、と本気で思う。

     僕自身、あまりの政治不信に、これまで選挙に行くのが億劫ではあった。そんな僕が投票を呼びかけるのは、初めてのことだ。でも、言いたい。若い人も、ばあちゃんも、じいちゃんも、父ちゃんも母ちゃんも、今度ばかりは絶対投票に行こう。そして、会津の豊かな自然と農業を守るためにも、孫やひ孫の代のことまで考えて、「脱原発」、「TPP反対」の政党や候補者を見極めて、投票しよう。「ならぬことはならぬ」の会津魂を僕は信じる。

    小原直樹/喜多方市/豆腐屋おはら店主

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