ヘソップ物語 11「爺様とテン」

  • 2017.01.30 Monday
  • 14:18

 むかしむかし、ある山里に一人の爺様が暮らしていました。嬶様に先立たれ、息子は町に出るといったっきり行方知れず、娘は麓の村に嫁いでたまに山まで様子を見に来ています。
 ある冬の日、爺様は納屋にしまっておいた小豆を入れた箱が散らばっているのを見つけました。
「ありゃりゃ。誰かが盗っていったんだな。はて誰だべな」
 爺様は雪の上についた足跡ですぐにテンだとわかり、その帰っていった足跡を追ってみました。すると崖の下の雪だまりに穴があり、どうやら巣穴に繋がっているようです。しばらく見ていると突然テンが顔を出しました。テンはそこで爺様と対面するとは思っていなかったようできょとんとした顔で立っています。爺様は優しい声で「エサがなかったのが。そんならもっとあげっからついてこい」と言いました。
 テンに通じたのか家まで付いてきました。爺様は秋に溜め込んだ食料がいっぱいあったのでテンにわけてあげようと思ったのです。袋に雑穀を入れて口にくわえて持っていけるようにして離れていたらテンは慌てて持っていきました。
 翌朝、またエサをやろうかなと思い納屋へ行ったら昨日の袋が置いてあります。律儀に袋を返しに来たのだなと爺様は喜んでまたエサを入れてあげようと袋を開きました。すると、底のほうになにやら石の粒のような物が入っています。
「なんだぁ。テンがお礼になにかくっちゃのがま」
 爺様は袋から取り出してようく眺めました。
「あれまぁ。これは砂金でねぇべか」
 人間が砂金を喜ぶとテンが知っていたのでしょうか。それはともかくテンのお礼なんだからと爺様はそれを大事そうに別の袋に入れました。
 翌日も、その翌日も少しずつですが砂金は溜まっていきました。そして雪が溶けて春が来る頃にはかなりの重さになっていたのです。
 ある春の日、麓の村から娘が様子を見にやってきました。爺様一人で冬が越せたのか心配だったのです。さらに、麓に移って一緒に暮らそうと言ってくれました。
「まだ達者だからここでいい。それに友だちができたんでな」
爺様はあのテンの一家と友だちになっていたのです。
「それはそうと、村の様子はどんな案配じゃ。川が溢れて大変だったそうだが、みんな無事にしているのか」
「かなり直ってきたけどお金がかかるので橋はまだ出来ていないのよ」
 それを聞いた爺様は、袋から砂金を取り出して言いました。
「この砂金を使ったらいいべ」
 娘はありがたく砂金を貰って帰りました。そして家の再建をし、余った分は村の橋にと寄付しました。それが村の役人に伝わり、砂金が出るとは一体何事かと調べることになってしまったのです。
 それを聞き爺様は慌てました。テンのお礼にもらったと言っても誰も信じてくれそうもありません。しかし、役人たちはついに爺様のところへやってきました。
「この辺の川で採れたものなのか。そこへ案内せい。そしてこれからは藩のものとなるから勝手に砂金を採ってならぬぞ」
 役人たちは必死になって近くの川に行き砂金を探しました。爺様は砂金が出て大勢の人たちが来て山が荒れてしまうのが心配です。
 しかし、どの川からも砂金が見つかりません。役人は爺様に詰め寄りましたが爺様も答えようがないのです。
 しばらくして砂金はその昔に爺様がどこかから採って貯めておいたものだろうということで役人たちはあきらめて帰って行きました。
 また元通りの静かな山になって、爺様はテンの巣穴も荒らされずに済んだことにホッとしました。そして、また冬になって砂金をお礼に持ってこられたら困るなぁと思いましたとさ。

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  • 2017.02.27 Monday
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